岡山備中神楽と島根石見神楽
-出雲神話の話が色濃く、芸能色が強い備中神楽と石見神楽-
2017年秋、中国地方では、神楽がそこ彼処で行われています。
今回は岡山県井原市の長澤神社における北山社の備中神楽、島根県益田市の久々茂八幡宮における石見神楽を見に行きました。
途中、岡山の吉備高原神楽民俗伝承館や、広島県安芸高田市 塩瀬八幡神社、広島県庄原市の比婆荒神神楽も拝見し、ついでに津和野にも行ってみる。
■岡山県の備中神楽
・岡山県の長澤神社では13時から北山社による備中神楽が催された。
・12時ごろ到着して神社で座っていると背広の方が声を掛けてくれた。そして総代に話を聞く。
毎年北山社を招いて神楽を開催。13時から16時と決まっている。
この町では8つに地区が分かれており、1地区60-70戸。
この地区共通の神様がおり、それは御幣を依り代としている。毎年当番を決め神様を接待する。そして地区の中では、くじ引きで御幣の接待係を決める。昔は富裕な人だけだった。
そしてこの例大祭の祭に、御幣をもって地区を歩き、次の地区へ手渡す儀式をする。
神社の前には神輿が飾られているが、昔は、槍や火縄銃を持ち、この神輿で地区を回った。
・今回の備中神楽の演目は、榊舞、導き、猿田彦、国譲り、大蛇退治。
・神楽の前にはビニールが引かれ、地元の子供たちが何やら段ボールや袋をもって陣取っている。餅まきのお菓子を取るためだったらしい。
・秋田や信州の神楽とは違い、観客との掛け合いもある面白い。そういえば宮崎高千穂神楽も観客と遊んでいた。夜神楽はこのようなものなのかもしれない。
■島根石見神楽
・島根県は、益田市の久々茂八幡宮での石見神楽を見る。
・この神楽団は、3日連続だわ、と言っていたので、久々茂保存会かは不明。この保存会がいろいろ回っているのか。
神社には、パイプ椅子が並べられ、装束の方と、普通の地元の人、子供たちがいる。そして装束の人へお花代を渡している。
・演目は、八幡、塵輪、黒塚、頼政、大蛇
・八幡は、宇佐八幡宮のホンダワケ。この八幡が異国から来た悪魔王を退治する話らしい。
そして八幡は神道と仏教の習合の神。
・塵輪は、神2人と鬼2人の対決。14代仲哀天皇(帯中津日子)が弓を使って塵輪という悪鬼を退治する。仲哀天皇は、ヤマトタケルの子供で皇后は神功皇后、そして本人はそれと言って活躍していないはず。それが神楽で大活躍。面白い。
・黒塚は、最もおしゃべりもある面白い舞。他の神楽団に対し「よく勉強していって」というくだりもある。阿闍梨が剛力と修行の旅をしている中、那須を通る。ここで悪狐がいるので退治しようと出かけるが、化かされて負けてしまう。それを聞いた弓の名人がこの狐を退治するという話。阿闍梨の仏教僧はだめだ、ということか。
・頼政は、本邦初公開の新たな演目という。頼政が鵺を退治する話。
子ザルが出てきて飴を観覧者へ投げたり、そして鵺が顕れて、頼政か弓で退治する。
・当たり前のように大蛇が最後の演目。
4匹の大蛇が出てきて酒をのむ、酔っぱらったところをスサノオが大事する。
大蛇の踊りが見せ場。電灯をピカピカして、4匹が縦に横に回転し、スサノオが巻き込まれる。そこを乗り切り刀で首を切る。
■この旅で面白かったのは、
・長澤神社では、地区で御幣を一年ごとに廻っていくこと。
そういえば、グアテマラのマシモン神も人形を接待し、地区を回っていた。共通の事象であること。
・そして、昔は御幣を祀るのは庄屋や裕福な人だけだった。それが今では公平性でくじで決まるとのこと。福井の能舞を学べるのが昔は豊かな人だけ、今はだれでも学べる、というのと共通点があった。
(終)