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なぜ人類は唄い踊るのか?

 -伝統的な歌と古来からの踊り‐

■世界中に、その土地ごとの歌と踊りがあり、何か意味を持っているようです。

例えば、エチオピアのハマル族の成人式。

この儀式を見た際には、その集団で一人の女性だけが成人式の準備中にずっと歌を歌っていたり、笛を吹き鈴を鳴らしながら女性が集団で輪になって踊っていたりしました。

 

また、パプアニューギニア。

豊穣を祈るために、カヌーをバナナの木で飾り、太鼓をたたいて踊る儀式がありました。

 

また、イランのテヘラン。

橋の下に人々が自然と集って歌ったり踊ったりしている。警察が来た瞬間に歌が止みみな散り散りになるのは、興味深い出来事でした。

 

また、日本の信州霜月祭り(冬至の祭り)。

大地を踏みしめ神様を元気付け、太陽が戻ってくるよう祈るため、踊ったりする。

(下に続く)

■なぜ、人は歌い、踊るのでしょうか?

他の動物たち、例えば、サルやクジラなども音でコミュニケーションしますし、鳥や魚も集団行動をとったりする。それらとは異なる意味を持った行動を人間はとっているのでしょうか?

さらに、歌と踊りの、現世人類にとっての普遍的な価値は何のでしょうか?

一方、それぞれの文化や民族の歌や踊りにはどのような違いや特徴があるのでしょうか?

そもそも、人は、なぜ歌い踊ることが楽しいのでしょうか?

 

・一つの思い付きとしては、一つのコミュニティを形作るために、同調行動や同一の歌、というのがあるのかもしれません。

同じ行動を他人ととることで、シンパシーが生まれたり、仲が良くなったりする。その広がる空間がコミュニティを形成している。さらに、一つのコミュニティとして固定化・閉塞化するのではなく、リズムが合う者同士は文化が違ってもつながるし、誰であっても踊りの輪に加わるものは仲間である、という認識が芽生えたりする。

 

こういった社会の構成と、バイタル感を醸成するのが歌と踊り。

そしてまた、異なるコミュニティを際立たせるのも歌かもしれません。例えば、世界遺産の五箇山には麦屋節という民謡があります。これは、元唄は隣集落だが、それが隣の村に伝わり少し変えられて歌われたりする。そこには、集落の個性が現れている気がします。

 

・そして、一方、宗教観とも切り離せない。

前述した日本の冬至に踊る踊りは、神様を元気付ける踊りでもある。

アボリジニーは、踊りは、大地から力をもらって、歌はそのいただいた大地の力を外へ出すもの、という思想があるそう。

また、一神教でも、礼拝や聖堂で必ず讃美歌があり、音楽があったりする。

 

 

■では、歌や踊りにどのような文化的特徴を見出せるのでしょうか?

 

・世界各地には、ケルト民謡やノルディック民謡、日本にも各地の民謡や琉球民謡などがあり、またその集落単位でも異なった歌がある。

必ず世界中どこにでも子守歌がありますが、これは、民族、集落、そしてお母さん・乳母によっても色合いがある。当然、各々に価値があり、尊重すべきものだと思います。

 

・そして日本にも素晴らしい歌文化がある。

万葉集には、「読み人しらず」という作者の歌がたくさん収録されています。著名人でもなく誰か作者が分からない歌が、連綿と人に感動を与えています。

そして、百人一首は、和歌と人の絵を一体化して意味を成しているし、ここに絵と字を区分けなく混然と使う文化が現れる。これが現代のEmojiにつながっているのでしょう。

また、和歌がすごいのは、日本人は、上句を詠んで、下句をほかの人が後に付け加える、という連歌遊びを考えたこと。これが故に、和歌の世界観は一人の人にクローズするのではなく、他人とつながり広がっていく。そして、例えば、人麻呂の上の句と、業平の下の句を組み合わせるような、和歌の編集もする。

中国は長恨歌など長い歌が残りますが、日本人は、もっぱら短歌で創作し、俳句に歴史がつながるのが特徴となるのでしょう。

 

・そして、もう一つ日本文化として挙げるとすると、歌垣。

風土記などに収録されていて、男女が歌を歌いあい、結婚をするというもの。東アジアの文化のようですが、日本で子供の遊びで「花いちもんめ」に名残りが残っている説がある。

 

■ここまで、歌と踊りを見てみましたが、今は現在。多様性がある世界で考えると、世界各地の歌を比較したりするだけでは不十分です。

耳が不自由な方にとって、「歌」はどのような意味があるのでしょうか?

そしてそのような方はどのような歌を創造しているのでしょうか?

・一つ興味深い活動をしている方は、アメリカのChristine Sun Kim。

生まれながら聴覚が不自由だったらしいですが、アメリカの手話をビジュアル化するなど「音」をメインにアーティスト活動している。

https://www.ted.com/talks/christine_sun_kim_the_enchanting_music_of_sign_language?language=ja

http://news.aol.jp/2012/10/24/christine-sun-kim-deaf-pe/

思いもよらないところから芸術が生まれ出ていることが本当に現代は素晴らしい。

(終わり)

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