グアテマラ
先住民マヤ民族と文化の伝承と混合、そして今生きる風習
I traveled Guatemala in central America to see MAYA's villages and culture in 2017 Spring.
2017年春、中米はグアテマラのマヤ族の村々を回りました。
これまでの旅行先は、エチオピア南部やバイカル湖など人類や日本人の起源に興味の追及でしたが、今回は、先住民が西欧化をどう受容し自ら変容しているのか、という現在に焦点を当てた旅です。
■旅の場所
・世界遺産のコロニー アンティグア市
・市場が有名なチチカステナンゴ
・アティトラン湖周辺のパナハッチェルから、ボートでサンチアゴ・アティトラン村、サンアントニオ・パロポ村、サンタカタリーナ・パロポ村
・その後さらにグアテマラ山地のケツァルテナンゴへアルモロンガ村、スニル村
・そしてマヤのピラミッドが残るティカル遺跡
おまけとして、シャーマンの方にお祈りの儀式をしていただきました。
■マヤから続く普遍的な生活や宗教文化
・マヤ・アステカ文明と、メキシコからユカタン半島に渡って紀元前から都市が形成されピラミッドが構築されていたそうです。
アメリカ大陸において唯一文字を持っていたのはマヤ。文字でどこまで伝承が続いたか分からないですが、宗教面、生活面で、今でもマヤの影響は非常に強い。
・例えば、ウィピルと呼ばれるカラフルな民族衣装。グアテマラの西部山地ではマヤ系先住民が100%の村も多く、市場ではウィピルを見たおばちゃんたちが野菜を売っています。
そしてこの民族衣装の織り機ですが、2,000年変わらない正座の姿勢の腰機を使っている。もちろんスペイン占領後高織り機という椅子に座る手法も入ったが、こちらの女性はみな腰機を使える。
そして、マヤ信仰を継承したシャーマンが普通に村々にいたり、普遍的な文化を継承している一面を見ることができます。
写真と動画は、マヤ系住民キチェ族の、ケチェルテナンゴのアルモロンガ村。
ここまで山の地方だと観光客慣れもしておらず、昔ながらの雰囲気。そしてとても安全な雰囲気の村。奇跡の村、と呼ばれているらしく、一昔前は治安が悪く黒魔術も日常だったが、牧師さんの指導で変わったという。
そしてスニル村のシャーマンの儀式の様子。遺跡の石だろうか片隅に祀られ、そして五色のろうそくと大きな砂糖の塊を燃やす様子。
(続く)
■スペイン占領後の1500年台以降の混合文化(シンクレティズム)
・一方、1500年代にスペイン占領下となったため、共通語はスペイン語となり宗教はカソリックを信じる人も多く、ほとんどの町は教会と広場・メルカドを備えた植民地町で構成されているなど、外見上コロニーの影響が非常に大きいように思います。
・占領後は、植民地にありがちな古文書や風習はスペインに根絶やしされそうになったそう。
そのような中、キリスト教が土着化したマシモン神という信仰や、カソリック教会内でマヤ祈祷が許されているなど宗教混合(シンクレティズム)が見られ、
インディヘナ(いわゆる先住民)とラディーノ(いわゆるメスチソ)が格差ある中別々のコミュニティを構築していたり、
占領後500年で混合・融合・棲み分けが進んでいるのが分かります。
・例えば、マシモン神や教会。
マシモン神と呼ばれる人形が、村の地区のコフラディアと呼ばれる地区組織で守られている。これは、起源は不明らしいが、キリストの復活祭で祭りに担ぎ出されたりしている。
村によると、まだ地方では大事にされているが、邪教のように扱われたり人形が廃棄されている村もあるそう。
教会の中ではマヤの祈祷師が祈ることもあり、一方マヤの儀式場ではキリストのクロスが見られたりする。
動画は、ちょー怪しいサンティアゴ・アティトラン村のマシモン神とシャーマンの祈り。
この村はツトゥヒル語で、マシモンの隣には男二人が人形にタバコやお酒を与えている。
写真は、代表的な植民地都市のアンティグアやシンクレティズムの教会のサンアンドレスシェクルの教会
(続く)
■今のマヤ系住民の生活
・1821年にスペインから独立後、中米内で混乱しながらグアテマラとして独立。
その後、アメリカの干渉を受け、独裁政治と内戦があり、1996年に内戦が終結。
話を聞くと、第二次世界大戦後の米国による反共の闘いが影響が強く、内戦のもとになったそう。
・その影響の一つとして、西部山間地域はまだ人民裁判が行われている。
地方都市からすると内戦時の政府への反感から先住民は政府の干渉を嫌うそう。そのため、これは警察と裁判権が確立されておらず、今でも年間200件ほどリンチがあり、新聞にもよく載っている。
・そして今に生きる人の魔術や迷信について。
こちらから地元の人に、東北の津波の跡に霊をタクシーに乗せたりすることがある、などと話をすると、向こうがいろいろ話を教えてくれた。
今でも霊は昼間でも出るし、音や火の玉が見えたりして、そこには金銀が埋まっていることもある。
そして、綺麗で気立てがよい娘さんへ、どこからともなくやってきた男性が鞄を渡し、中身は金銀で尽きることがなく幸せに暮らした、などとの昔話もいろいろあるとのこと。
日本昔話のようだ。
(続く)
■所感
・マヤとスペイン、2つの文化が混合・棲み分け・(そして一部は駆逐)をしている状況を鑑みると、この動的な環境やダイナミズムが新たな価値を生んだりする。異質なものの衝突や融合は新たな価値を生み出す方程式の一つかもしれません。
・そして文化を伝承する中でこそ鋭くなる民族性があったりする。
例えば、マヤの古文書やシャーマン(黒魔術)信仰などはスペイン占領で抹消されそうになったが、口承で強く残っている。つまり、形ある文字でなくても民族性が維持されていたりする。
これまで、一神教と文字が多様性がある先住民文化を破壊しているとばかり思っていましたが、それを受け入れる側も賢く伝承を残していたり衣食住に名残りが強く残る。
・そして生活をすると、利便性や裕福さ第一主義になるが、マシモン神など非合理的な風習や腰機など非経済性できな慣習が残るもの。
そして、村の昔話が伝承になり、歴史を生み出していく、今この瞬間から歴史が生まれている、などと感じました。
(終わり)